【研究成果】寒くなると細胞は自ら温度を上げようとする―細胞における新たな温度調節機構の発見―
動物は、活動に適した温度になるように、体温を様々な方法で調節しています。それでは、生命の最小単位である個々の細胞も自身の温度を環境温度の変化に応じて調節しているのでしょうか?その疑問に対する答えは得られていませんでした。
研究当時、合成・生物化学専攻の村上 光 博士課程学生(現:東京大学・日本学術振興会特別研究員PD)、長尾 耕治郎 助教(現:京都薬科大学・准教授)、梅田 眞郷 教授(現:ホロバイオ(株)代表取締役)らは、変温動物であるショウジョウバエの細胞の温度を測定することにより、環境温度が低下すると、細胞は自ら温度を上げようとすることを発見しました。この温度の調節は、細胞自らが温度の変化を感知して細胞を構成する脂質分子の形を変化させることで達成されていました。さらに、今回見つけた細胞の温度調節に関わる役者は哺乳動物をはじめとした幅広い生物に存在していました。本研究により、「寒くなると細胞は自ら温度を上げようとする」という新たな温度調節機構が見出されました。
本研究成果は、2022年3月16日に、国際学術誌「Cell Reports」に掲載されました。
詳しい研究内容について
寒くなると細胞は自ら温度を上げようとする―細胞における新たな温度調節機構の発見―
論文情報
【タイトル】
Cell-autonomous control of intracellular temperature by unsaturation of phospholipid acyl chains
(リン脂質アシル鎖の不飽和化による,細胞内温度の細胞自律的な制御)
【著者】
村上光、長尾耕治郎、坂口怜子、木田啓佑、原雄二、森泰生、岡部弘基、原田慶恵、梅田眞郷
【掲載誌】Cell Reports, 38(11):110487
【DOI】https://doi.org/10.1016/j.celrep.2022.110487
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/268929