【研究成果】固溶体化が燃料デブリの「その後、」を決めるー核燃料デブリの安全な保管や処理・処分に関わる新たな化学的知見ー
原子核工学専攻の佐々木 隆之 教授は、東北大学、日本原子力研究開発機構と共同で、核燃料物質や燃料被覆管材料、さらに原子炉内の構造材として使われるステンレス鋼を原料とした模擬デブリを合成し、化学的な性質を研究しました。模擬デブリを分析したところ、核燃料の主成分である二酸化ウランに、被覆管に含まれるジルコニウムやステンレス鋼に含まれる鉄が溶け込んだ状態になっていました。これが「固溶体化」です。この模擬デブリを海水や純水に浸して化学反応を調べたところ、固溶体化が進行すると毒性の高い放射性物質であるアクチノイドの溶け出しが抑制されることが明らかになりました。これらの結果から、燃料デブリができる際に「固溶体化」が起こると、もとの二酸化ウランよりも化学的に安定になることが分かりました。これは、取り出し後の燃料デブリの保管や処理・処分を考える上で重要な知見となります。
本研究成果は、2022年6月6日付けで「Journal of Nuclear Materials」に掲載されました。
詳しい研究内容について
固溶体化が燃料デブリの「その後、」を決めるー核燃料デブリの安全な保管や処理・処分に関わる新たな化学的知見ー
研究者情報
佐々木 隆之 京都大学教育研究活動データベース
論文情報
【タイトル】
Structure, Stability, and Actinide Leaching of Simulated Nuclear Fuel Debris Synthesized from UO2, Zr, and Stainless-Steel
【著者】
Akira Kirishima, Daisuke Akiyama, Yuta Kumagai, Ryoji Kusaka, Masami Nakada, Masayuki Watanabe, Takayuki Sasaki, Nobuaki Sato
【掲載誌】Journal of Nuclear Materials
【DOI】10.1364/OE.455718