フラーレンに迫る電⼦受容能をもつ 平坦な⼀次元π共役炭化⽔素の開発

物質エネルギー化学専攻の砂⼭尚之 元⼤学院⽣、髙⽊ 周 ⼤学院⽣、松尾 優 学部⽣、アイセムスの深澤愛⼦ 教授、早川雅⼤ 元特任研究員 (現 理学研究科助教)は、分子工学専攻の関修平 教授、名古屋⼤学の⼭⼝茂弘 教授、⽥巻明⽇佳 元⼤学院⽣らと協⼒し、フラーレンC60の⼀次元部分構造をもつ新たな有機材料の開発に成功しました。

フラーレンは多数の炭素原⼦からなる球状分⼦であり、優れた電⼦受容体として有機エレクトロニクス材料への応⽤が検討されてきました。フラーレンは他の多くの有機材料とは異なり、多くの電⼦を受け⼊れても分解しないという特徴を有していますが、この性質はフラーレン特有の球状構造に起因すると⻑らく考えられてきました。本研究では、フラーレンの電⼦受容体としての特徴を実現するためには五⾓形の部分構造が重要であるとの考えのもと、フラーレンC60と五⾓形の連結様式が同じ⼀次元状の有機分⼦「オリゴビインデニリデン」を設計し、その合成に成功しました。この分⼦は、五⾓形の炭素⾻格が⼀次元状に連なった構造をもち、C60よりも対称性がはるかに低く、個々の炭素原⼦も平坦な構造をもつにもかかわらず、五⾓形の数と同数までの電⼦を受容できることがわかりました。この成果を通して、フラーレンの電⼦受容体としての性質の根本を⽀えているのは五⾓形の部分構造であることを明らかにしました。本研究で⾒出した分⼦設計⼿法は、炭化⽔素⾻格のみで優れた電⼦受容性を実現できる新⼿法であることから、有機半導体や太陽電池、電池や触媒など、電⼦の輸送や授受がかかわる様々な機能性材料の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2023年5⽉15⽇に英国科学誌Nature Communications誌でオンライン公開されました。

研究詳細

フラーレンに迫る電⼦受容能をもつ、平坦な⼀次元π共役炭化⽔素の開発

研究者情報

書誌情報

タイトル

Flattened 1D fragments of fullerene C60 that exhibit robustness toward multi-electron reduction

(多電子還元に対する堅牢性をもつ、フラーレンC60 の平らな一次元フラグメント)

著者

Masahiro Hayakawa, Naoyuki Sunayama, Shu I. Takagi, Yu Matsuo, Asuka Tamaki, Shigehiro Yamaguchi, Shu Seki, Aiko Fukazawa

掲載誌 Nature Communications
DOI 10.1038/s41467-023-38300-3
KURENAI http://hdl.handle.net/2433/282134

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