社会経済・技術の変革による脱炭素化費用の低減
社会の脱炭素化には一定程度の費用がかかるとされています。例えば、カーボンニュートラル目標を達成するためには世界全体でおよそGDP 比3%程度の費用がかかるとされています。この経済的な負担は軽減できるのか、またそれはどのように実現できるのかという問いは、社会にとって非常に重要な課題です。
都市環境工学専攻の藤森真一郎 准教授、大城賢 助教は、立命館大学の長谷川知子 准教授、国立環境研究所の高倉潤也 主任研究員、北海道大学の上田佳代 教授らとの共同研究により、社会変革や技術革新などによってこの経済的負担をどのくらい軽減できるか、また、その社会的な負担をゼロにできるとするとどのような条件が必要なのかを明らかにしました。①エネルギー需要の低下(エネルギー需要変革)、②エネルギー供給側の技術進歩(エネルギー供給変革)、③環境に配慮した食料システムへの移行(食の変革)、④脱炭素化投資の喚起による資本投資の増加(投資の好循環)といった社会的な施策を同時に導入した時のみ、経済的な負担がほぼゼロになるという結果となりました。この結果は、社会経済・技術的な施策が効果的な政策や人々の嗜好の変化、不確実な技術進歩などに依存するため、社会全体が総力をあげて取り組んでいくことの重要性を示唆しています。一方、世界全体の総和としては経済負担がゼロ以下になっても、地域によっては負担が大きなところがあり、格差や途上国の開発を考慮した包括的な視点も必要であることがわかりました。
本研究は、2023 年5 月4 日、ネイチャー・パブリッシング・グループの国際学術雑誌「Climate Action」にて発表されました。
研究詳細
研究者情報
- 藤森 真一郎 京都大学教育研究活動データベース
- 大城 賢 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル | Climate change mitigation costs reduction caused by socioeconomic-technological transitions (社会経済・技術の変革による脱炭素化費用の低減) |
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著者 |
Shinichiro Fujimori, Ken Oshiro, Tomoko Hasegawa, Junya Takakura and Kayo Ueda |
掲載誌 | Climate Action |
DOI | 10.1038/s44168-023-00041-w |
KURENAI | http://hdl.handle.net/2433/282765 |