世界CO2ゼロ排出を達成する新たなシナリオ ―直接空気回収・水素を用いた合成燃料(e-fuel)の活用―
気温上昇を1.5℃に抑制するため、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書では、2050年頃に世界全体でのCO2排出量をゼロとする複数の代表的なシナリオが示されました。それらは、バイオマス・CO2回収貯留(CCS)による負の排出、民生や運輸等のエネルギー需要部門における急速な需要低減、電化技術への転換を必要としていますが、これらのシナリオの実現には多くの課題が指摘されてきました。本研究ではこれらに依存しない新たなゼロ排出シナリオとして、炭素回収利用(CCU)を活用するシナリオを提示しました。これは、大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)と、再生可能エネルギー電力起源の水素を用いた合成燃料、いわゆるe-fuelを利用するものです。本研究の結果、このシナリオでは、合成燃料が世界のエネルギー需要の約3割に達し、電化等の急速な需要転換を回避しつつCO2ゼロ排出を達成し得ることが分かりました。他方、直接空気回収や太陽光・風力発電の急拡大を伴うため、必要となる追加費用は電化を用いたシナリオの約2倍となることも明らかになりました。このように、CCUシナリオは、需要転換等が遅れた場合の代替となり得る一方で課題も多いことから、電化等の対策も含めた包括的な戦略の重要性が示唆されました。本成果は、日本時間2023年7月14日真夜0時にCell Pressが発行する国際学術誌『One Earth』にオンライン掲載されました。
研究詳細
世界CO2ゼロ排出を達成する新たなシナリオ ―直接空気回収・水素を用いた合成燃料(e-fuel)の活用―
研究者情報
- 大城 賢 京都大学教育研究活動データベース
- 藤森 真一郎 京都大学教育研究活動データベース
- 長谷川 知子 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル | Alternative, but expensive, energy transition scenario featuring carbon capture and utilization can preserve existing energy demand technologies(炭素回収利用を用いた新たなエネルギー移行シナリオ:既存のエネルギー利用技術を維持できるが高コスト) |
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著者 |
Ken Oshiro, Shinichiro Fujimori, Tomoko Hasegawa, Shinichiro Asayama, Hiroto Shiraki, Kiyoshi Takahashi |
掲載誌 | One Earth |
DOI | 10.1016/j.oneear.2023.06.005 |
KURENAI | http://hdl.handle.net/2433/284464 |