可逆な化学反応ネットワークにおける経路選択の原理 ――準不可逆性の発現――
東京大学大学院総合文化研究科の平岡秀一教授と、京都大学大学院工学研究科の佐藤啓文教授らによる研究グループは、可逆な化学反応ネットワークの中のある反応過程が準不可逆になることで、ネットワーク中の反応経路が選択され、準安定な速度論状態を作り出すこともできることを明らかにしました。
発表のポイント
- 正逆いずれの方向へも進行しうる可逆な化学反応のみから構成される反応ネットワークにおいて、無数の候補の中から、いかにして目的の生成物に向かう反応経路が選択されるのかという、経路選択の原理を解明しました。
- タンパク質の折り畳みや分子自己集合など、多数の化学反応が複雑に連結したネットワーク構造は自然界に遍く存在し、適応性や頑健性などの機能は、こうしたネットワークにおける複数の反応間の協働に由来すると考えられています。今回、ネットワーク構造の役割の一つとして、ある反応段階が不可逆に振る舞うことが明らかになりました。
- 個々の反応ではなく、それらが連結したネットワークを包括的に理解することで、単純な足し合わせでは表せない非線形現象の解明への貢献が期待されます。
研究詳細
可逆な化学反応ネットワークにおける経路選択の原理 ――準不可逆性の発現――
研究者情報
- 佐藤 啓文 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
Pathway bias and emergence of quasi-irreversibility in reversible reaction networks: extension of Curtin–Hammett principle |
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著者 |
Satoshi Takahashi, Tsukasa Abe, Hirofumi Sato, and Shuichi Hiraoka |
掲載誌 | Chem(オンライン版:7月18日付) |
DOI | 10.1016/j.chempr.2023.06.015 |
KURENAI | http://hdl.handle.net/2433/285543 |