水素分子の回転温度を予測し、プラズマ再結合を効果的に起こす

核融合発電では、磁場で閉じ込めた水素プラズマを1億度に加熱し、イオン同士が衝突して核融合する際に放出されるエネルギーを利用します。この際、閉じ込め領域から漏れ出たプラズマによって装置の壁が損傷することを防ぐため、壁の近くにガスを入射し、放射と再結合でプラズマを冷却します。再結合は、プラズマ中の水素分子の振動・回転温度に応じて起こりやすさが変わると考えられており、振動・回転温度を予測し、制御する方法が研究されています。

京都大学大学院工学研究科の米田奈生 博士課程学生(研究当時)、四竈泰一 准教授、蓮尾昌裕 教授、米国ローレンス・リバモア国立研究所 Filippo Scotti研究員らの国際共同研究グループは、日本と米国の3種類の核融合実験装置を用いた水素分子の分光計測から回転温度を評価し、全ての装置で、回転温度における分子の壁表面との相互作用およびプラズマ中の電子・イオン衝突の寄与の評価可能性を明らかにしました。本成果により、プラズマ中の回転温度を予測し、制御できるようになる可能性があります。

本成果は202372710:00(現地時刻)にオーストリアおよび英国の合同出版国際学術誌「Nuclear Fusion」にオンライン掲載されました。

研究詳細

水素分子の回転温度を予測し、プラズマ再結合を効果的に起こす

研究者情報

書誌情報

タイトル

Spectroscopic measurement of increases in hydrogen molecular rotational temperature with plasma-facing surface temperature and due to collisional-radiative processes in tokamaks(トカマク装置における対向壁表面温度と衝突ふく射過程による水素分子回転温度上昇の分光計測)

著者

Nao Yoneda, Taiichi Shikama, Filippo Scotti, Kazuaki Hanada, Hiroki Iguchi, Hiroshi Idei, Takumi Onchi, Akira Ejiri, Takeshi Ido, Kaori Kono, Yi Peng, Yuki Osawa, Go Yatomi, Akihiro Kidani, Michihiro Kudo, Ryosuke Hiraka, Kosuke Takeda, Ronald E Bell, Anurag Maan, Dennis P Boyle, Richard P Majeski, Vlad Soukhanovskii, Mathias Groth, Adam G McLean, Robert S Wilcox, Charles Lasnier, Kazuo Nakamura, Yoshihiko Nagashima, Ryuya Ikezoe, Makoto Hasegawa, Kengoh Kuroda, Aki Higashijima, Takahiro Nagata, Shun Shimabukuro, Ichiro Niiya, Izumi Sekiya, and Masahiro Hasuo

掲載誌 Nuclear Fusion
DOI 10.1088/1741-4326/acd4d1
KURENAI http://hdl.handle.net/2433/284484

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