生きた動物脳内の受容体近傍タンパク質を検出する新手法を開発―遺伝子操作不要、高時間分解能で解析可能に―
合成・生物化学専攻の浜地 格 教授、田村 朋則 講師、高遠 美貴子 博士課程学生(研究当時)らは、神経伝達物質受容体の周辺に存在するタンパク質を生きたマウスの脳内で網羅的に標識(ラベリング)し、同定する新手法を開発しました。
神経伝達物質受容体のタンパク質間相互作用ネットワーク(インタラクトーム)の解明は、記憶、学習といった複雑な脳機能を理解する上で重要です。本研究グループは今回、光を駆動力とした新たな近傍ラベリング法としてPhoxID法を開発し、高い時空間分解能で生きたマウス脳内の受容体インタラクトームを同定することに成功しました。また、生後発達期から成熟期にかけて、シナプス形成に重要なAMPA受容体(AMPAR)の周辺タンパク質群が変化することを見出し、幼若期特異的にAMPARの周辺に存在する複数のタンパク質を発見しました。本技術は原理上あらゆるタンパク質を標的とした近傍タンパク質解析に適用可能であり、脳機能を分子レベルで解析するための強力な研究ツールとしての発展が期待されます。
本研究成果は、2024年8月1日10:00(現地時間)に米国科学誌「Nature Chemical Biology」のオンライン版で公開されました。
研究詳細
生きた動物脳内の受容体近傍タンパク質を検出する新手法を開発―遺伝子操作不要、高時間分解能で解析可能に―
研究者情報
- 浜地 格 京都大学教育研究活動データベース
- 田村 朋則 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル | “Photoproximity labeling of endogenous receptors in the live mouse brain in minutes” (生きたマウス脳において分単位で進行する内在性受容体の光近傍ラベリング) |
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著者 |
高遠美貴子、坂本清志、野中洋、Fátima Yuri Tanimura Valor、田村朋則、浜地格 |
掲載誌 | Nature Chemical Biology |
DOI | 10.1038/s41589-024-01692-4 |
KURENAI | ー |