クモ糸形成の秘密を解き明かす-疎水性の異なるクモ糸タンパク質の自己組織化-

材料化学専攻の沼田圭司教授(理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターバイオ高分子研究チームチームリーダー)、マライ・アリ・アンドレス理化学研究所上級研究員らの研究チームは、クモ糸が複雑な階層構造を持つ固体繊維に変化する過程を解明しました。

この成果は、超高性能かつ低環境負荷の次世代型繊維材料の開発に貢献することが期待されます。

研究チームは、クモの牽引(けんいん)糸の主要なタンパク質成分であるMaSp1を生産するための新しいプラットフォームを開発しました。さらに、MaSp1が無秩序なタンパク質から、より複雑な構造へと段階的に組み立てられる要因を明らかにし、クモ体内での糸形成過程を模倣しました。この過程には、イオンの勾配に応じた液-液相分離(LLPS)、水素イオン指数(pH)の勾配に応じたナノ繊維の形成、機械的変形に応じたβシート構造の誘導が含まれており、これらの変化が相乗的に作用して、ナノ繊維が配向(一定方向に配列)した内部構造を持つ糸繊維の自己集合を可能にしています。特に、MaSp1の自己集合が迅速に進行することが、新たに開発されたモニタリング技術を用いて観察されました。

本研究は、科学雑誌『Advanced Functional Materials』オンライン版(8月28日付、日本時間8月28日)に掲載されました。

研究詳細

クモ糸形成の秘密を解き明かす-疎水性の異なるクモ糸タンパク質の自己組織化-

研究者情報

書誌情報

タイトル

Spider silk: Rapid, bottom-up self-assembly of MaSp1 into hierarchically structured fibers through biomimetic processing

著者

Ali D. Malay, Nur Alia Oktaviani, Jianming Chen, Keiji Numata

掲載誌

Advanced Functional Materials

DOI 10.1002/adfm.202408175
KURENAI

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